入居者はガス会社を選べないことが多い
賃貸住宅では、ガス会社を選定するのは入居者ではなく、オーナー(大家)や管理会社であることがほとんどです。入居者は物件に付いてくるガス会社をそのまま使うことになり、自分で他社と比較して選ぶ余地がありません。利用者が会社を選べないということは、会社どうしの料金競争が働きにくいということでもあります。これが、同じLPガスでも賃貸で料金が高くなりやすい背景のひとつです。
設備費が毎月の料金に上乗せされる構図
もうひとつの主因が、設備費の転嫁です。商習慣として、ガス会社がオーナー向けに給湯器・エアコン・インターホンなどを「無償貸与」し、その費用を入居者が毎月支払うガス料金に上乗せして回収する、という構図が広く見られました。オーナーにとっては初期負担なく設備が整う一方、その分は入居者のガス料金として長期間かけて回収されます。ガスそのものの原価とは別の費用が料金に混ざるため、賃貸ではプロパン料金が割高になりやすいのです。
三部料金制による是正
この不透明さを是正するため、2025年4月施行の三部料金制では、賃貸住宅で消費設備(エアコンなど)の費用をLPガス料金に計上することが禁止され、設備費用は外出し表示が求められるようになりました。これにより、何にいくら払っているのかが見えやすくなります。
CHECK
ただし、既存の契約については段階的な対応が前提で、すべてがすぐに解消されるわけではない点には注意が必要です。
アパートでガス代が高くなる3つの原因
「引っ越してからガス代が高い」と感じるとき、原因は大きく3つに分けられます。
- 設備費の上乗せ:前節の構図で、給湯器などの費用が従量単価や基本料金に織り込まれている。検針票の内訳で設備料金が分かれていなければ、この可能性を疑います。
- 使用量が少なく、基本料金の比率が高い:一人暮らしで月5m³前後の使用量だと、請求額に占める基本料金の割合が大きくなり、1m³あたりの実効単価が高く見えます。基本料金と従量単価の相場で使用量別の目安を確認できます。
- 都市ガスからの引っ越しで単価だけを見ている:プロパンは同じ体積で都市ガスの約2.2倍の熱量があるため、1m³あたりの単価は高く見えて当然です。比べるなら熱量差を補正した比較が必要です。
どれに当たるかは、検針票の使用量と請求額を地域相場と照らせば切り分けられます。3つのうち入居者側で交渉の余地があるのは1つ目だけです。
賃貸でガス会社は変更できる?
結論から言うと、入居者個人の判断では変更できないのが通常です。集合住宅ではガス会社との契約主体がオーナーや管理会社で、ボンベ・配管・メーターは建物単位で設置されています。一部屋だけ別の会社に替えることは設備上も契約上もできません。
変更できるとすれば、オーナーが建物全体の契約先を見直す場合です。入居者にできるのは、検針票と地域相場の比較を材料に管理会社・オーナーへ相談することまでです。オーナー側には、無償貸与されている設備の残存価額の精算が発生しうるという事情があり、すぐに動きにくい点は理解しておく必要があります。戸建ての賃貸では、オーナーの了承があれば切り替えられることがあります。
CHECK
「賃貸でも会社を変えられる」とうたう勧誘を受けた場合は、契約主体がオーナーであることを前提に、管理会社を通さない手続きになっていないかを確認してください。
入居前にできること
物件を探す段階では、まず物件情報の設備欄で「プロパンガス(LPガス)」か「都市ガス」かを確認します。そのうえで、契約前に料金水準を確認しておくことが有効です。液化石油ガス法には情報提供のしくみがあり、賃貸の入居希望者は、要請すればガス料金などの情報提供を受けられることになっています。気になる物件があれば、不動産会社や管理会社を通じて基本料金・従量単価を尋ね、地域の相場と照らし合わせておくと、入居後の負担を見通しやすくなります。
入居後の対処
すでに入居している場合は、まず手元の検針票で内訳を確認しましょう。基本料金・従量料金・設備料金が分けて記載されているか、ガスと無関係な費用が混ざっていないかを見ておきます。相場より高いと感じたら、ガス会社を選定したのはオーナー側であるため、管理会社やオーナーに相談するのが筋です。賃貸では、入居者個人の一存でガス会社を替えられないのが通常である点は押さえておきましょう。
なお、持ち家や戸建てであれば、自分でガス会社を選べます。相場と照合したうえで、乗り換え・切り替えの手順を踏んで検討する余地があります。
よくある質問
- 賃貸アパートでもプロパンガスの会社を変更できますか?
- 原則として入居者個人では変更できません。集合住宅ではガス会社との契約主体がオーナー(大家)や管理会社で、建物単位で供給しているためです。変更を望む場合は、検針票と地域相場の比較を材料に管理会社・オーナーへ相談する形になります。戸建ての賃貸で、オーナーの了承が得られる場合には切り替えられることがあります。
- 賃貸でプロパンガスを契約しないという選択はできますか?
- 給湯器やコンロがガス式の物件では、契約しなければお湯も調理もできないため現実的ではありません。ガス代を抑えたい場合は、契約しないのではなく、検針票の内訳(基本料金・従量料金・設備料金)を確認して相場と比べ、不明な費用があれば説明を求めるのが先です。
- アパートのプロパンガス料金は持ち家よりどれくらい高いのですか?
- 一律の倍率はありません。賃貸で高くなりやすいのは、設備費の上乗せと会社を選べないことによる競争の弱さが理由で、同じ会社でも建物ごとに料金は異なります。自分の請求が高いかは、使用量と請求額を地域相場(石油情報センター調査の県・地区平均)と照らして判断します。
- 2025年4月の法改正で賃貸のガス料金は何が変わりましたか?
- 液化石油ガス法施行規則の改正で、賃貸住宅ではエアコンなど消費設備の費用をLPガス料金に計上することが禁止され、基本料金・従量料金・設備料金を分けて示す三部料金制の徹底が求められました。既存契約は段階的な対応が前提のため、検針票の内訳を確認し、不明な費用があれば販売会社に説明を求められます。
